公益通報者保護法の改正の議論 5 ~ 内部通報体制の整備義務
内部通報体制の整備「義務」を事業者に対して課すかどうかについて、下記のような議論が行われています。
ア 内部通報体制の整備義務を課すことの是非及び対象とすべき事業者の範囲
大規模の事業者と中小規模の事業者とでは、分けて考える必要があるものと整理されています。
まず、①大規模の事業者については、内部通報体制の整備義務を課すべき、という意見が多かったようです。
これに対して、②中小規模の事業者については、「法律上の義務」を課すべきであるという意見、制度が導入されても形骸化する可能性があるので「努力義務」にとどめるべきという意見など、様々な意見があるようです。
このため、中小規模の事業者については、どのようなレベルで義務を課すべきか、引き続き検討することとされています。
イ 履行すべき義務の内容
「履行すべき義務の内容」については、事業者の規模、業種によって様々であって、画一的に定めることは相当ではなく、各事業者の実情に即した創意工夫による取組は抑制すべきではないという方向性が示されています。
履行すべき義務の内容の具体例としては、例えば、
①通報窓口の設置
②不利益取り扱いの禁止
③秘密保持等を内容とする規定の整備
④制度の周知
⑤担当者の配置
⑥担当者の教育
などが挙げられています。
また、「義務の履行を確保するための措置」として、①例えば、事業者において内部通報体制が整備されていない場合、2号通報(行政機関に対する通報)について「思料する」だけで通報できるようにする、②内部通報体制を整備していないことを3号通報の特定事由に追加するなど、2号通報、3号通報の要件緩和と結びつけていくべきという意見が多いようです。
その他の義務の履行を確保するための措置については、例えば勧告・公表や行政処分のような行政措置、公共調達の際に加点する等のインセンティブを設けることなどが挙げられていますが、具体的には引き続き検討することとされています。