会社法改正の議論~株主総会資料の電子提供制度
会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案
会社法制(企業統治等関係)部会において、会社法改正の議論が進められていたところ、平成31年1月16日開催の第19回会議において、「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」が決定されました。
要綱案では、大きな項目として、
① 株主総会に関する規律の見直し
② 取締役等に関する規律の見直し
③ その他として社債の管理など
が挙げられています。
このうち、① 株主総会に関する規律の見直しとしては、
ア 株主総会資料の電子提供制度
イ 株主提案権
の2つが柱となっていますが、本コラムでは、ア 株主総会資料の電子提供制度について、取り上げます。
株主総会資料の電子提供制度
株主総会資料の電子提供制度とは、株主総会を招集する際の株主総会資料、具体的には、株主総会参考書類や事業報告、計算書類等について、「電子提供措置」をとる旨を、定款で定めることができるものとする、というものです。
ここでいう電子提供装置とは、一定の電子提供措置期間において、電磁的方法により株主が情報の提供を受けることができる状態に置く措置をいいます。
但し、上記のような定款の定めがあったとしても、株主は、電子提供された事項について、それを記載した書面の交付を請求することができるものとされています。
コーポレートガバナンス・コード
平成27年6月1日から、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」)が適用され、平成30年6月には、改訂CGコードが適用されています。
CGコードにおいては、基本原則3として、
「上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。 その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。」とされています。
また、補充原則 3-1① では、特に原則3-1に挙げられてる、①会社の方向性、②コーポレートガバナンスの基本方針、③指名、報酬に対する考え方などの情報の開示に当たっては、法令に基づく開示を含め、ひな型的な記述や具体性を欠く記述を避け、利用者にとって付加価値の高い記載となるようにすべき、とされています。
このようなCGコードの適用が大きなきっかけとなり、現在の株主総会招集通知、参考書類等においては、株主に対して、多種多様な情報が提供されるようになってきています。
上記の改正が実現すれば、印刷代や送料等のコスト増にそれほど配慮することなく、株主総会参考書類や事業報告等の記載を充実させることができそうです。したがって、この改正は、上述のような株主総会資料の充実という、実務の動きを後押しし、さらに加速させるものであると考えられます。
各社とも、今後ますます、株主総会資料の記載について、ひな型的なものではなく、株主にとって「付加価値の高い情報」とは何かについて、検討していかなくてはならないでしょう。