会社法改正の議論~株主提案権

 前回のコラムで取り上げたように、平成31116日開催の会社法制(企業統治等関係)部会において「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」が決定されました。

  本コラムでは、①株主総会に関する規律の見直しのうち、「株主提案権」について取り上げます。

株主提案権とは?

 株主提案権とは、株主が、株主総会の場において、議題や議案などを提案することができる権利をいいます(会社法303条から305条)。

 株主提案権には、会社法上、

① 一定の事項を株主総会の目的とするよう請求する権利(議題提案権、会社法303条)

② 株主総会の目的事項について、議案を提出する権利(議案提案権、会社法304条)

③ 提出しようとする議案の要領を株主に通知するよう請求する権利(議案の通知請求権、会社法305条)

3種類があります。

 このうち、②議案提案権は、通常、株主総会の場で、会社提出議案に対する「修正動議」という形で行使されます。

 これに対して、①議題提案権や、③議案の通知請求権が行使されると、招集通知において、会社提出議案と並列的に他の株主に対して示されることにより、その賛否が問われることとなります。

株主提案権に関する近時の動向

 近時、株主提案権は、海外機関投資家や個人株主から、会社の経営方針に対する問題提起として行使されるケースなど、株主提案権の行使は増加傾向にあると言われています。今後の経営に関する方針の相違が発端となって、大株主から株主提案がなされることもあります。

 株主提案権が行使されることにより、会社経営に対する一定のチェック機能が果たされることになります。このため、一般論としては、適切な株主提案権の行使は、コーポレートガバナンス上望ましいと考えられます。

 しかし、近時は、例えば、株主総会の場で議論することがふさわしいとは思えないような提案、著しく多数の提案がなされることもあり、濫用的とも思える株主提案権の行使が問題となっていました。

 裁判例においては、株主提案権の行使が、正当な目的を有するものでないなどの場合には、株主提案権の行使は権利の濫用として許されない場合がある、としたものもあります。

 しかし実務上、株主提案権の行使を「権利の濫用」と判断するには、その後に株主総会の決議取り消しリスク、役員の第三者責任が発生するリスクなどを勘案するとその判断は非常に難しいと指摘されていました。

要綱案における株主提案権

 このような実務の動向を反映して、今回の要綱案では、濫用的な株主提案権の行使を制限する、以下のような改正案が検討されています。

1 株主が提案することができる議案の「数」の制限

 株主が、第305条第1項の規定による請求(議案の通知請求権)をする場合に、この株主が提出しようとする議案の数が10を超えるときは, 10を超える数に相当することとなる数の議案については適用しない、すなわち議案の通知請求ができないものとする、というものです。

 なお、議案の内容により、どのような内容のものを1つと数えるかについて規律を設けることも、あわせて検討されています。

 2 「目的」等による議案の提案の制限

 第304条(議案提案権)及び第305条第1項から第3項までの規定(議案の通知請求権)は、

 ①  株主が、専ら人の名誉を侵害し、人を侮辱し、若しくは困惑させ、又は自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で請求をする場合

 ② 株主総会の適切な運営が著しく妨げられ、株主の共同の利益が害される おそれがあると認められる場合

には認められない、すなわち、会社はそのような株主提案を拒絶できるものとする。ことが検討されています。

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