会社法改正法の成立(3)~ 濫用的な株主提案権行使の制限
株主提案権とは?
株主提案権とは、
- 株主が一定の事項を株主総会の目的とすることを請求する権利(議題提案権:会社法303条)
- 株主総会において、株主総会の目的である事項について、議案を提出することができる権利(議案提案権:会社法304条)
- 株主が提出しようとする議案の要領を株主に通知することを請求する権利(議案通知請求権:会社法305条)
をいいます。
適切な株主提案権の行使は、株主による経営者に対する牽制と機能しますから、一般論としては、コーポレートガバナンス上望ましいことであるといえるでしょう。
しかし、近時は、株主総会の場で議論することがふさわしいとは思えないような株主提案、著しく多数の株主提案がなされることもあります。このような濫用的とも思える株主提案権の行使が問題となっていました。実際に、株主提案について、権利の濫用であると判示した裁判例もあります。
濫用的な株主提案権行使の制限 ~ 議案の数の制限
改正会社法では、株主が提案することができる議案の数が、10までに制限されることとなりました(改正会社法第305条第4項、5項)。これは、議案通知請求権(会社法305条)に関する制限です。
なお、以下の議案については、1つの議案とみなす旨の定めが置かれています(改正会社法第305条第4項)。
- 取締役、会計参与、監査役又は会計監査人(「役員等」という。)の選任に関する議案
- 役員等の解任に関する議案
- 会計監査人を再任しないことに関する議案
- 定款の変更に関する二以上の議案で、当該二以上の議案について異なる議決がされたとすれば、当該議決の内容が相互に矛盾する可能性がある場合
目的等による議案の提案の制限
会社法改正要綱案においては、株主提案権の目的等による制限の規定が設けられていました。この規定は、改正会社法案審議の過程で、衆議院で修正され、削除されています。
具体的には、
- 株主が専ら人の名誉を侵害し、人を侮辱し、若しくは困惑させ、又は自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で議案の提出をする場合、
- 議案の提出により、株主総会の適切な運営が著しく妨げられ、株主の共同の利益が害される恐れがあると認められる場合
には、株主提案権の行使が制限される旨の規定が提案されていましたが、この修正案は削除され、改正会社法に盛り込むことは見送られました。