会社法改正法の成立(8)~ 社外取締役を置くことの義務付け

社外取締役を置くことの義務付け

 近時、取締役会の監督(モニタリング)機能を強化するため、社外取締役をより積極的に活用すべきであると指摘されてきました。このため、社外取締役設置の義務付けは、会社法改正の過程で議論となっていました。

平成26年会社法改正

 平成26年会社法改正過程においても、社外取締役の設置義務について議論がなされましたが、義務化までは見送られました。

 とはいえ、事業年度の末日において、一定の株式会社が社外取締役を設置していない場合には、定時株主総会において、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならないこととなりました(会社法327条の2)。

 この点、社外取締役を「置かない理由」ではなく、社外取締役を「置くことが相当でない理由」が求められていることから、単に「社外取締役を置かなくてもガバナンス上不都合はない」とか「適任者が見つからない」といった消極的な事情を挙げるだけでは足りず、現時点での会社の個別事情に照らせば、社外取締役を設置して業務執行の決定に参画させると、むしろ企業価値を毀損するおそれがある等、積極的な事情まで説明が求められていると解されています。

 しかしながら、これを合理的に説明することは一般的には難しいと考えられるため、社外取締役設置が事実上義務付けされたと評されていました。

今回の会社法改正

 今回の会社法改正では、以下の要件を充たす会社は、社外取締役を置かなければならないものとされました(改正会社法第327条の2)。

  • 監査役会設置会社であること
  • 公開会社であること(株式の譲渡制限がないこと)
  • 大会社(資本金が5億円以上または負債総額200億円以上)であること
  • 有価証券報告書の提出義務があること

実務の状況

 上場会社に対しては、2015年のコーポレートガバナンス・コードの適用により、社外取締役の設置等について、Comply or Explainが求められていることから、事実上、社外取締役の義務化が進んでいました。

 現に、2019年8月1日に東京証券取引所が公表した「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況」によれば、2名以上の独立社外取締役を選任する上場会社の比率は、東証1部では93.4%、JPX日経400では99.0%となっています。

 このような実務の状況を踏まえれば、社外取締役の義務付けに関する会社法の改正のインパクトは大きくはないようにも思えます。しかし、上場企業において社外取締役が義務付けられるステージに入ったのですから、今後ますます、どのような社外取締役が選任されているか、さらにその社外取締役が活躍しているかどうかが、重要となってきます。

 上場企業としては、持続的成長や中長期的な企業価値向上に資するかについて、独立社外取締役を含めた取締役会の構成や評価が、以前にも増して問われてくるであろうことに留意するべきでしょう。

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