公益通報者保護法の改正の議論 2 ~ 不利益取扱いから保護する通報者の範囲
公益通報者保護法では、不利益な取り扱いから保護すべき「通報者の範囲」を定めています。
現行法上は、労働基準法第9条に定める「労働者」(職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者)であることが要件です。しかし、保護されるべき通報者の範囲については、従前からその範囲を拡大すべきという意見が多かったところです。
専門調査会においても、保護の範囲を労働者に限らず広げていく、という方向性が示されています。但し、その属性によって、公益通報者として保護される要件が異なってくる可能性があり、今後も議論が継続されます。
ア 退職者
退職者については、基本的には、不利益取扱いから保護する通報者に含めるべきと整理されています。
しかし、仮に退職者を保護するとしても、保護する退職者を退職後一定期間内の者に限定するかどうか、その場合、実態に照らして合理的な期間を設定することができるかという点については、引き続き検討するものとされています。
イ 役員等
会社の役員等も、不利益取扱いから保護する通報者に含めるべき、との方向性と整理されています。
しかし、役員等は、労働者と異なり、会社に対して善管注意義務を負っています。このため、労働者と同様の取り扱いをするのではなく、原則として、会社内部での是正措置が事前になされていることを保護の要件として求めるべきである、とされています。
但し、役員としての実態や内部で是正措置を前置することが適当でない場合もあることから、例外的な取り扱いを定めるか否か、引き続き検討することとされています。
ウ 取引先等事業者、その他の通報者
これらを保護する通報者に含めることについては、引き続き検討という形で整理されています。